コヘルツ論文セレクション 
小児心臓・集中治療に関わる研究を簡単かつ少しだけ読み込んで紹介するブログ
呼吸

小児心臓外科術後の横隔神経麻痺:STS-CHSデータベース

Fraser CD 3rd, Ravekes W, Thibault D, Scully B, Chiswell K, Giuliano K, Hill KD, Jacobs JP, Jacobs ML, Kutty S, Vricella L, Hibino N.

Diaphragm Paralysis After Pediatric Cardiac Surgery: An STS Congenital Heart Surgery Database Study.

Ann Thorac Surg. 2020 Aug 5:S0003-4975(20)31287-X. doi: 10.1016/j.athoracsur.2020.05.175. Epub ahead of print. PMID: 32763270.

背景

  • 横隔神経麻痺の発生率は0.3-12.8%と研究によって差があり、麻痺と予後との関連や縫縮術のアウトカムも様々。
  • 理由は単施設の研究だからであるため、今回は多施設のデータベースを用いて調べた。

要点

  • 126施設による、アメリカのデータベース(米国の小児心臓手術の95%以上を網羅)、横隔神経麻痺や縫縮術を受けた患者を抽出
  • 横隔神経麻痺の危険因子を調査。施設毎のrandom-effectsを考慮したmixed-effects logistic regressionを使用。Predicted valuesを計算し、risk-adjusted ratesとして施設の大きさに差があるかも評価。
  • 2214名(1.2%)に横隔神経麻痺が発生。横隔神経麻痺は、死亡率や主な罹患率、気管切開、長期人工呼吸、再入室と有意に関連。2214名中1105名(49.9%)が横隔膜縫縮術が施行された。横隔膜縫縮術を施行された群のほうが、予後が不良。早期縫縮術の方が、後期縫縮術よりも予後良好。施設の大きさ(center volume)により横隔神経麻痺や縫縮術の施行率に差なし。

Figure 1. 手術別の横隔神経麻痺

注意点・コメント

  • データベースであり、横隔神経麻痺の診断や縫縮術は、コードを用いて抽出している。すなわち、診断の質(エコーを用いて横隔膜の動きをみているか、呼吸器症状を合わせているか、どの程度の横隔膜の左右差を有意としているか、など)に疑問がある。
  • 横隔膜縫縮術の有無で予後を比較しているが、全て単純比較のみ。交絡因子は何もコントロールされていない。早期と後期の縫縮術についての比較も同様。すなわち、plicationが有用かどうか、早期にすべきかどうかの判断材料には使えない研究。
  • 施設の大きさ(small volume/mild volume/high volume centers)で分けて横隔神経麻痺と縫縮術のrisk-adjusted ratesを比較し、バラバラであると結論づけている。確かに大きさで差はなくても、施設毎の違い(preference)を否定しているわけではない。個人的にも、施設毎の違いは大きいように思う。
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木村聡
小児心臓麻酔や集中治療に関わる文献を、浅く、でも少しだけ掘り下げて紹介したいと思います。