コヘルツ論文セレクション 
小児心臓・集中治療に関わる研究を簡単かつ少しだけ読み込んで紹介するブログ

大血管転位患者に対する経皮的心房中隔裂開術と脳組織酸素飽和度

van der Laan ME, Verhagen EA, Bos AF, Berger RM, Kooi EM.

Effect of balloon atrial septostomy on cerebral oxygenation in neonates with transposition of the great arteries.

Pediatr Res. 2013 Jan;73(1):62-7. doi: 10.1038/pr.2012.147. Epub 2012 Oct 24. PMID: 23095977.

背景

  • 近年、先天性心疾患の(術中・術後ではなく)術前の神経学的影響について、議論がされている。
  • TGAに大して、PGE1でも改善しない低酸素血症に対し、BASが行われる。
  • BASの、脳組織酸素飽和度への影響を調べたい。

要点

  • 単施設、後ろ向き研究、TGAのある新生児
  • BAS群と非BASに分類。動脈血酸素飽和度(SpO2)と脳組織酸素飽和度(rSO2)を比較。BAS群では、BAS前、2時間後、24時間後に評価。非BAS群では、baselineとその24時間後に評価。
  • 21名中12名がBAS施行。rSO2はBASにより42%から48%へ上昇し、さらに24時間後には64%まで上昇した。SpO2はBASにより上昇したが、2時間後と24時間後に変化はなかった。BASによる合併症なし。

Figure 1. SpO2の変化(a)とrSO2の変化(b)

注意点・コメント

  • 両群でbaseline時の年齢に有意差なしとしているが、単位がdayであり、hourにすると差があるかもしれない。実際、最初のrSO2測定時の入院時間(hour)について、両群に有意差あり。
  • また、BAS施行のindicationについての記載もなく、BAS群と非BAS群の比較は、単純にしてはいけない。
  • ただし、本研究の面白いところは、BAS群におけるBAS前後のSpO2とrSO2の変化であろう。特にSpO2が変化せずともrSO2がBAS後に徐々に上昇(extraction ratioの低下)しており、脳への影響を考え早めにBASを推奨する理由になりうる。
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木村聡
小児心臓麻酔や集中治療に関わる文献を、浅く、でも少しだけ掘り下げて紹介したいと思います。