コヘルツ論文セレクション 
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インターベンション

純型肺動脈閉鎖症に対する右室筋切除術

Bryant R 3rd, Nowicki ER, Mee RB, Rajeswaran J, Duncan BW, Rosenthal GL, Mohan U, Mumtaz M, Blackstone EH.

Success and limitations of right ventricular sinus myectomy for pulmonary atresia with intact ventricular septum.

J Thorac Cardiovasc Surg. 2008 Sep;136(3):735-42, 742.e1-2. doi: 10.1016/j.jtcvs.2008.03.039. Epub 2008 Jun 9. PMID: 18805279.

背景

  • 純型肺動脈閉鎖症(PA/IVS)に対し、右室筋切除により右室のサイズを大きくし、二心室修復を目指す方法がある。
  • 右室の筋切除による右心系の発達や、二心室修復への影響は不明。

要点

  • 単施設、後ろ向き研究、PA/IVSに対し右室筋切除を施行
  • 腹囲と比較した右心系構造物のサイズをz-valueで経時的に評価。
  • 43名のPA/IVSのうち、16名が右室筋切除術を施行。そのうち13名が二心室修復となった。右室金切除術後、右室のサイズは増加したが、三尖弁のz-valueは経時的に見ても殆ど変化がなかった。

Figure 4. 右室筋切除後の三尖弁の大きさの経時的変化

コメント・注意点

  • 二心室修復が可能か否かを判断する一つの方法として、右室漏斗部の発達や、右室への流入、すなわち三尖弁の大きさが重要であるという報告がある。右室筋切除により右心系への血流が増え、三尖弁の成長が促されることを期待しているのだが、本研究では期待したほど三尖弁が成長しないことを示している。
  • ただし、術後どの程度右心系の血流が増えたのか不明。心房間圧較差などにより、右心系への血流は変化するはずであり、動脈血酸素飽和度や心房間圧較差といった情報が欠如している単施設の報告では、どの程度積極的に心房間交通を減らしているのかわからない。実際、右室容量が増加したと述べているが、グラフをみると経時的には大きくなっていない。
  • 肺動脈弁のvalvotomyを施行された患者を人室修復を目指した群、その他を単心室を目指した群として、intention-to-treatで右心系構造物を比較しているが、この比較自体は施設の方針であり、ここからあまり大きな情報は得られない。
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木村聡
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